駅長の手紙 2024.12

道の駅萩往還を運営する一般社団法人萩物産協会の会員(正会員・準会員)の皆様に、毎月の精算書と一緒にお届けしている「駅長の手紙」。
ユーモアあふれる日常の話題から萩全体の課題への真面目な考察まで、毎月ジャンルを問わない多岐にわたる話題で隠れファンもたくさんいるとかいないとか。

会員皆様宛の手紙とは別に、毎月の給与明細とともに道の駅萩往還のスタッフ全員に渡している手紙もあります。こちらも日々の業務の中で生まれた気づきと、道の駅萩往還の理念を伝える駅長からのメッセージ。つまりは、道の駅萩往還の歴史そのものです。

そんな駅長の手紙を道の駅萩往還の記録として未来に残すため、公式ホームページでシリーズとして毎月掲載いたします。ぜひご一読ください。

※「駅長の手紙」における発言内容は、駅長・篠原の個人的な意見です。
※表現の一部に不適切な点が含まれる可能性がありますが、著者の意図を尊重し、原文のまま掲載しております。

萩物産協会 会員皆様宛

一般社団法人 萩物産協会会員 皆様

令和6年12月
道の駅萩往還 駅長:篠原 充

「僕は愚かな人類の子供だった」

 拝啓 師走の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 私は昭和38年生まれ。幼いころのヒーローは、仮面ライダーやキカイダー、サイボーグ009。宇宙戦艦ヤマトが地球を救うために、はるかかなたの異星まで旅する物語に、胸を躍らせたものです。人類のために、献身的に戦う異形のヒーロー。愛や勇気、不屈の精神は彼から学び、自分もいつかそうなりたいと思ったものです。

 表題は、佐野元春氏が1998年に発売された手塚治虫氏のトリビュートアルバムに提供した作品タイトルです。詩の内容は、主人公が幼いころ、無敵のアンドロイド「鉄腕アトム」に憧れ、破壊者や侵略者から、人類を献身的に守ってくれるアトムに感謝の気持ちを抱く。まるでクラスの親友のような明るく無邪気な心を持ったアトム。人間になることまで望んだアトム。しかし、アトムがいなくなり、その後、人類はリアルな世界で愚かな戦争や地球環境破壊を繰り返す。今の私たちは、アトムが守ってくれる価値がある存在なのかと問いかけるものです。

 近年、萩でも温暖化の影響で、農水産物に異変が起きています。畜産業界では世界情勢の影響で飼料が高騰し、生産者を苦しめています。萩焼でも、釉薬や粘土の供給元が立て続けに廃業し、存続が危ぶまれています。あらゆる業種で人材や後継者不足、高齢化で生産者が急速に減ってきています。そして、萩の観光業の不振で多くの関連産業が苦しんでいます。

 「自分さえよければ良い」は、ある意味「正論」です。競争に勝ったものだけが残っていく。人類、ひいては生物の本能かもしれません。しかし、それは私たちにとって本当に美しいことでしょうか。私は自分勝手な愚かな人類の子供です。しかし、私の心の中の片隅には、今でも仮面ライダーやアトムが生きています。

 しかし、アトムはもういません。現実の世界を守っていくのは、アトムから「大事な魂」のバトンを受け取った、私たち人類です。

  敬具

道の駅萩往還 スタッフ宛

道の駅萩往還 従業員 各位

令和6年11月
道の駅萩往還 駅長:篠原 充

「物」売ってなんぼ オンラインとオフライン

 中国で、通販サイトの規模が世界トップに急拡大した原因の一つに、「実店舗が弱い」があるそうです。中国の人口は約14億2千万人。日本の1億2千万人に比べると、元々10倍以上の市場規模があり、加えて経済発展による中間層~富裕層の急増、新型コロナによる外出制限、通販サイトで使いやすいキャッシュレス決済の普及など、社会的な背景があってこそですが、「実店舗が弱い」は私には意外であったと同時に「なるほど」とも思いました。

 私が20代のとき、上海に1回、香港に複数回行った事があります。たいした回数ではありませんが、そのとき小売店やレストラン、ホテルで受けた「おもてなし」は日本に比べるとあまりレベルが高いものではありませんでした。しかし、その中国の企業が実店舗の重要性に気づき始めているそうです。

 日本は、礼儀正しい国民性という点ではでは世界1だと思います。外国人が日本の幼稚園や保育園で、園児が自分の靴をきちんと下駄箱に入れたり、整列したり、食事の前後に「いただきます」「ごちそうさまでした」という姿を見るとびっくりするそうです。私たちは幼いころからそうした礼儀を「躾(しつけ)」として教えられて育ってきました。

 日本の小売業やサービス業では「おもてなし」が当たり前で、施設が高級になればなるほどスタッフの「おもてなし」のレベルも上がっていきます。

 私たちが働く道の駅萩往還は、ドラッグストアや激安スーパーのように価格が特に安いわけではなく、大型ショッピングモールのように、物が豊富で様々なコンテンツがあるわけではありません。人口密度が極めて低い田舎の、小さな小さな施設です。

小売業は、「物売ってなんぼ」。販売~接客技術で勝負です。

一カ月、ごくろうさまでした。

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